ようこそ、親愛なる読者様。 「Table Talker’s Log」へ。わたくしは卓上の語り部でございます。
皆様は「因習村(いんしゅうむら)」という言葉をご存じでしょうか? 閉鎖的で、独自の古い掟や風習が色濃く残り、外部の常識が通じない場所……。ミステリーやホラーにおいて、これほど魅力的な舞台はございません。
本日は、そんな不穏な空気を纏ったこの作品の封を切りたいと存じます。 ゲームマーケットにて「マーダーミステリー」の棚に並びながら、その実態は抱腹絶倒のパーティーゲーム。 シリーズ最新作、『そういうお前はどうなんだ 因習村編』でございます。
1. 開封の儀:不穏な美しさと、完璧な守り

まずは、この怪しくも美しいパッケージをご覧ください。 闇夜に浮かぶ能面のような仮面、そして古びた社(やしろ)。「これぞ因習村」という雰囲気が漂っております。
コンポーネント確認(ネタバレなし)
本作はシナリオと展開が命。故に、カードの内容には触れず、その種類のみをご紹介いたしましょう。
- ラウンドサマリーカード:地味ながら、これがあるだけで進行がスムーズになる有難い存在です。
- スタートプレイヤーカード:事件の第一発見者を示すカード。
- キャラクターカード & 設定カード:今回の「役柄」と「性格」を決定づけます。
- 暴露カード:事件の動機や証拠となる、危険なカードたち。
- 事件カード & 被害者設定カード:今回の惨劇の概要を示します。
- エンディングカード:物語の結末を告げるカード。
- 祭りカード(新要素!):事件前夜に行われた祭りの詳細。これが「因習村」としての解像度を一気に高めてくれます。

カードサイズとスリーブの儀
カードサイズは 縦88mm × 横63mm。 わたくしが愛用しております、DOMINA GAMESの「Card Sleeves Ghost レギュラーサイズ(エンボス&クリアハード)」が、あつらえたようにぴったりと収まりました。 激しい「言い訳」の応酬が予想されますゆえ、しっかりと保護しておくのが吉でございましょう。

2. 卓上の見聞録:罪をなすりつけ合う、狂騒の宴
さて、ここからは実際にどのようにゲームが進むのか、その狂気と笑いに満ちた流れ(レビュー)をお届けいたします。
配役と事件の幕開け
まずは配役決定。「新人警官」などのキャラクターと、ぶっ飛んだ「性格」が割り振られます。この設定が非常に演じやすく、ロールプレイ初心者の方でもすぐに「村の住人」になりきれるのが素晴らしい点です。
そして、事件発生。 第一発見者により、被害者がどのような無惨な姿で発見されたかが語られます。さらに新要素「祭りカード」の公開により、「昨夜の奇祭」が事件にどう関わっているのか……妄想が膨らみますな。
暴露カード:知らぬ間に懐に入れた「凶器」
ここからが本作の真骨頂。 全員に配られた「暴露カード」から、プレイヤーは自分以外の誰かに罪を着せるべく、怪しげなカード(動機や凶器になり得るもの)を左右の隣人へコッソリと渡します。
そして、受け取ったカードは中身を見ずにシャッフルし、自分の前に伏せるのです。 つまり、「自分の懐に何が入っているか、自分だけが知らない」状態で尋問が始まります。恐ろしい……!
窮地の即興劇:「えっ、なんでそんなモノ持ってるの!?」
スタートプレイヤーが「お前が犯人だ!」と怪しい人物を指名し、その前のカードをめくります。 衆目に晒されるのは、血塗られた凶器か、あるいは動かぬ証拠か。
指名されたプレイヤーは、その瞬間初めて見る証拠品に対し、即興で「言い訳」をしなければなりません。 「いや、これは昨日の祭りで使う小道具で……!」 「ち、違うんです! それは私が拾っただけで……!」
隣人が悪意(親愛)を込めて渡してきたカードですから、当然言い逃れは困難。その焦りと苦しい弁明が、卓上に爆笑の渦を巻き起こします。
運命の投票とエンディング
言い訳合戦を繰り返し、事件の全貌(という名の妄想)が出揃ったところで、全員で投票を行います。 最も怪しいと断じられたプレイヤーは、「エンディングカード」を読み上げます。 シリアスな結末から、思わず吹き出すコメディな結末まで。どのカードを引くかで物語の後味が変わるのも、また一興です。
3. 総評:何度でも訪れたくなる、愉快な地獄
「何度遊んでも、全く違う事件になる」 このシステム設計は見事の一言。カードの組み合わせとプレイヤーの語り口によって、物語は無限に生成されます。
まさに「コミュニケーションツールの傑作」。 勝ち負け以上に、全員で一つの奇妙な物語を作り上げる楽しさが、ここにはあります。 「因習村」という重苦しいテーマとは裏腹に、プレイ後は心地よい疲労感と笑い声に包まれることでしょう。
皆様も、この村の奇祭に参加してみませんか? ただし、濡れ衣を着せられぬよう、口の準備運動はお忘れなく。
卓上の語り部

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